【ザ・タイガース】ヒューマン・ルネッサンス『朝に別れのほほえみを』
やっと8曲目です。書き続ける毎に、だんだん重たいテーマに疲労も感じます。
それだけ、このアルバムは素晴らしく、且つヘビーなものなのですね。
発売された1968年当時はベトナム戦争がまだまだ激しい時でした。日本国内でも各大学
がイデオロギーと絡めて戦争反対・安保反対を訴え、学園は荒れておりました。
タイガース的な反戦ソングという捉え方をされやすい『朝に別れのほほえみを』と『忘れか
けた子守唄』ですが、タイガースの音楽製作に携わったすぎやま氏はこれまでの言動から
所謂「右翼」といわれる人だと僕は思っておりました。反対にこのアルバムで多くの作詞を
担当したなかにし氏はどちらかというと「左寄り」の方だと思っておりました。
こういったイデオロギーも異なる方が一つの仕事をされていたこと。こういった壮大な芸術
作品を作り上げていたことに感心さえ覚えます。
この曲のテーマは戦場に送られる『兵士』、主人公は恋人と別れる日に戦場に向かいます。
本当は悲しい悲しい歌なのですが、タイガースの演奏にはストリングスなく、バンドの演奏に
メンバーのボーカル&コーラス、ジュリーの間奏での台詞。時代を感じさせる曲です。
戦争の傷跡さえ見ること・聞くことのできない時代に育ち、大人になりました。
戦争には勿論反対ですが、今自分が声を大にして、こういった歌で世の中にアピールできる
ような力、勇気が僕にあるのかなと思うと、正直言って「自信がない」と答えてしまいそうな自分
がいます。
楽曲を演奏し、世の中にアピールしたのだろうと思います。40年以上経って、ジュリーが『わが
窮状』という曲で護憲を訴えました。これは多大なる勇気と覚悟が要ります。ジュリーは40数年
経過してもその勇気を持ち続けている稀有なミュージシャンなのだと改めて感じます。